久保建英、ソシエダ6発大勝でも評価真っ二つのなぜ?エースに課された新基準

チームが6点を奪って圧勝した試合で、攻撃の中心と目される選手の評価だけが大きく割れる。そんな少し不思議な出来事が、レアル・ソシエダの久保建英をめぐって起きました。勝ったのに厳しく採点されるのは、それだけ期待の水準が上がっている証拠でもあります。日本人選手が「出ているだけで話題になる」段階を過ぎ、結果の数字で測られる立場になったいま、この評価の割れ方は何を映しているのでしょうか。

目次

1. 大勝の試合で、評価だけが真っ二つに割れた

UEFAヨーロッパリーグ第3節のリールストロム戦で、レアル・ソシエダは6-0の大勝を収めました。久保は2試合続けて先発に名を連ね、58分までプレーしましたが、得点とアシストには絡めませんでした。

現地メディアの評価は、ここで二つに分かれます。「攻撃を牽引した」と好意的に見る声がある一方で、「物足りない」として最低点に近い採点をつけた媒体もありました。同じ試合を見て、ここまで評価が離れるのは珍しいことです。

この割れ方そのものが、久保の立ち位置をよく表していると私は思います。好評価の側は、ボールを運び、味方を動かした過程を見ています。厳しい側は、6点も入った試合でエースが数字を残さなかったという結果を見ています。どちらも間違いではなく、物差しが違うだけです。

一昔前なら、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)やヨーロッパリーグ(EL)に日本人選手が出場するだけでニュースになっていたと私は記憶しています。いまはゴールやアシストを決めてもニュースに上がらないほど、海外でプレーする姿が当たり前になりつつあります。そのぶん結果以上のものを求められ、大きな期待が寄せられるようになりました。今回の厳しい採点も、その延長線上にあるように感じます。

私自身、応援している選手の評価が自分の印象と大きくずれていると感じたことは何度もあります。ただ、そういうときは大抵、チーム全体の調子が悪く、何をやってもうまくいかない試合でした。今回はその逆で、チームが6点を奪った試合です。チームの出来に紛れず、個人の出来そのものが問われた結果の割れ方だと受け止めています。

数字だけ見ると「無得点・無アシストで途中交代」ですが、実際は大量リードの展開で早めに休ませた、という読み方もできそうです。過密日程の最中に主力を58分で下げる判断は、出来の悪さよりも次の試合を見据えた起用に近いのではないかと考えられます。

2. 「数字で測られる」ようになった背景と、右サイドの仕事

かつては、欧州の大舞台に立つこと自体がニュースになり、日本人選手への評価の言葉も「勤勉さ」や「技術の高さ」が中心でした。守備をさぼらない、戦術を理解している、ボールを失わない。こうした長所は監督に信頼される一方で、攻撃の主役として数字を求められる場面はまだ限られていました。

久保の場合、その段階はすでに過ぎています。チームの攻撃を任される立場になると、評価の軸は「試合に貢献したか」から「試合を決めたか」へ移ります。エース格の選手は、守備の献身やパスの精度だけでは足りず、ゴールやアシストという目に見える形で勝敗に関わることが求められます。

戦術面で見ると、久保が主に担う右サイドは、評価が割れやすい場所です。右から中へ切り込み、利き足の左でシュートやラストパスを狙うのが持ち味ですが、相手が警戒して人数をかけてくると、そのぶん味方が空きます。自分が引きつけ役になって周りが点を取る展開では、本人の数字は残りにくくなります。

起点として関わった選手と、最後にボールに触った選手のどちらを高く評価するかは、媒体の方針で変わります。採点が二分した背景の一つは、ここにあります。

もう一つは、ハイライト中心の見られ方です。試合の要約映像やスタッツの一覧では、ゴールとアシストが真っ先に目に入ります。起点としての働きは、試合を通して見ないと伝わりにくいものです。私も全試合を追えているわけではなく、日本人選手の活躍は朝のニュース番組や情報サイトで目に飛び込んでくることがほとんどです。そうした届き方では、どうしても数字のある場面が先に残ります。

3. 欧州で「結果」を求められた日本人選手との比較

久保の立場を、過去に欧州で攻撃の中心を担った日本人選手と並べてみます。通算成績は時期や大会で大きく変わるため、ここでは役割と評価のされ方を比べます。

選手(主なクラブ)主な役割評価されたポイント求められたもの
久保建英(レアル・ソシエダ)右サイドから中へ切り込む攻撃の起点運ぶ力、崩しの起点作る役と決める役の両立
中田英寿(ペルージャ、ローマ)中盤の攻撃的な司令塔展開力、縦への鋭いパス中盤から試合の流れを変えること
香川真司(ドルトムント)トップ下のアタッカー狭い場所での技術、得点感覚2列目から自分で決める得点
三笘薫(ブライトン)左サイドのドリブラー1対1の突破力仕掛けから得点・アシストを生むこと

並べてみると、共通するのは「チームの攻撃が自分を経由する」立場になった時点で、評価の軸が結果へ移っている点です。攻撃の中心を任された選手ほど、出来のよい試合でも数字がなければ物足りなさを指摘されやすくなります。久保は、その系譜のいちばん新しい位置に立っています。

違いを挙げるなら、三笘が主に仕掛け役として突破からの数字を求められるのに対し、久保はサイドの選手でありながら、チャンスを作る役と決める役の両方を期待されています。片方だけでも評価される選手は珍しくないので、両方を求められること自体が期待の高さを示していると私は考えています。

ただ、表の「求められたもの」が結果に寄るほど、数字に出ない働きは採点の外に置かれがちになります。私個人は、数字よりもチームへの献身性を評価したいと考えています。ボールを持って運ぶ場面はもちろん、たとえばバルセロナのラフィーニャのように、ボールを持つ味方と息を合わせて動く連動や、前線からの献身的なプレスにも目を向けたいところです。今回「攻撃を牽引した」と評価した側は、こうした働きも含めて見ていたのかもしれません。

4. シュナちゃんのコーナー🐾

  • Q. チームが6-0で勝ったのに、なんで厳しい点数がつくワン?
    A. それだけ期待されているからなんだワン!エースと呼ばれる選手は、勝っただけじゃなくて「自分で試合を決めたか」まで見られるんだワン。大勝の試合だと、数字を残した選手がたくさんいるぶん、残せなかった選手が目立ちやすいんだワン。
  • Q. 結局、ゴールやアシストがないとダメってことワン?
    A. そう単純じゃないんだワン。エースは数字を期待されるけど、ボールを運んだり味方を動かしたりする働きは、数字には出にくいんだワン。僕なら、点数だけじゃなくて、どんなプレーで攻撃に関わったかも見たいワン。

5. 過密日程のなかで、評価が一つにまとまるかを見るポイント

割れた評価を一つにまとめるには、やはりゴールやアシストという分かりやすい結果が近道になります。そのうえで、数字の手前にある働きも合わせて見ると、採点の差がどこから来ているのかが分かりやすくなります。

観戦するときは、得点の場面だけでなく、ペナルティエリアの中でボールに触る回数に目を向けると、復調の度合いが見えやすくなります。右サイドで受けたあと、中へ切り込んでシュートまで行けているか、それとも外で味方に預けて終わっているか。この違いが、数字につながるかどうかを分けると私はみています。

交代のタイミングも手がかりになります。接戦でも最後までピッチに残るようになれば、監督が「試合を決める役」として信頼している合図です。

そして私が次の試合でいちばん見てみたいのは、チームへの献身性です。結果を求める声が強い立場だからこそ、前線からのプレスや味方と連動した動きが続いているかどうかは、ハイライトには映りにくい支えになります。ゴールやアシストという数字と、数字に出ない献身の両方を追うと、記事の見出しだけでは分からない現在地が見えてくるはずです。

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