フライパンを出して、焼いて、裏返して、洗う。平日の夕飯づくりで負担になるのは、調理そのものより、この一連の手数ではないでしょうか。電子レンジに入れるだけで両面が焼けるという調理器具が話題になっているのは、その手数に正面から切り込んでいるからです。
1. 核心をひとことで:「焼く」をレンジに任せる道具
無印良品の「レンジで焼き料理 グリルプレート」は、外蓋、発熱材の入った内蓋、底面にも発熱材が入ったプレート本体の3点でできています。調理法は、どの蓋をどう使うかで切り替えます。
- 内蓋を食材に落とす:上下から食材に触れて、焼き目を付けて焼く
- 内蓋を浮かせる:食材に触れさせずにかぶせ、焼く・蒸し焼きにする
- 外蓋を使う:炊く・煮る・蒸し焼きにする
外蓋と内蓋は併用できず、どちらか一方を使う決まりです。具体例を挙げると、料理家のしらいのりこさんが紹介したポークソテーは、内蓋を落として600Wで7分という手順です。
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私自身、レンジはごはんやおかずを温めるのがほとんどです。料理で使うとしても、じゃがいもなどをフライパンに入れる前にふかしておく、下ごしらえの役どころでした。そういう使い方をしている人にとって、レンジで焼くところまで済むのは、道具の位置づけが一段変わる話だと感じます。
レンジ調理の魅力は、数字だけ見ると「加熱時間の短さ」に見えます。ところが実際は、焼き目が付かないせいで、これまで蒸し料理の延長にとどまっていました。私は、この製品の価値は時短そのものより、レンジ調理の守備範囲を「焼き」にまで広げた点にあると思います。
一方で、公式には揚げ物の調理はできないと案内されています。何でもこなす道具ではなく、得意な料理の範囲がはっきりした道具として捉えるのが実用的です。
2. 食文化と調理の背景:なぜ「裏返さずに焼ける」が価値になるのか
レンジだけでは焼き目が付かないのは、食材の内部から水分が出て、表面が焼き目の付く温度まで上がらないからです。この製品は、レンジの電波を受けて熱を出す発熱材を上下に置き、食材の表面を直接高温にします。上下から同時に熱が入るので、片面ずつ焼いて裏返す工程が要りません。
日本の家庭料理には、焼き魚や炒め物のように、火のそばに立って見張る調理が根づいています。共働き世帯が当たり前になり、この「見張る時間」を減らしたいという需要は、時短家電や冷凍食品の広がりと同じ流れにあります。
見張る時間と並んで見落とされがちなのが、食べたあとの片付けです。私も夕飯づくりで強いて面倒な工程を挙げるなら、使い終わったフライパンやボウルを洗うところです。焼く道具がそのまま器になるなら、調理中だけでなく食後の手間まで含めて軽くなる、という読み方もできそうです。
料理家による公式レシピが公開されていることも、後押しになっています。料理家で管理栄養士の長谷川あかりさんは、この商品のためにフレンチトーストや長芋つくねなど3品を考案しました。朝食から夜のおかずまで使い道の見本が最初からそろっているのは、新しい調理器具が台所に定着するうえで大きな利点です。
3. 関連する調理法との比較
同じ「焼く」でも、道具によって得意不得意ははっきり分かれます。一般的な特徴を整理しました。
| 項目 | グリルプレート(レンジ) | フライパン | 魚焼きグリル |
|---|---|---|---|
| 裏返し | 不要(上下から加熱) | 必要 | 両面焼きは不要、片面焼きは必要 |
| 火のそばで見張る | 不要 | 必要 | ある程度必要 |
| 焼き目の付き方 | 発熱材に触れた面に付く | 全体に強く付けやすい | 上下から均一に付きやすい |
| 煮る・蒸す | 外蓋で対応 | 蓋があれば可能 | 不向き |
| そのまま食卓へ | 可能 | 見た目を整えにくい | 皿に移す必要あり |
| 揚げ物 | 不可 | 可能 | 不向き |
表から分かるとおり、この道具が置き換えるのは「フライパン全般」ではなく、「少量を手早く焼きたい平日の一品」です。大人数分を一度に焼く、強い火力で一気に炒めるといった用途では、フライパンに分があります。焼き目を全体にしっかり付けたい料理もフライパン向きで、どちらか一つを選ぶより、料理によって使い分ける前提で考えると向き不向きが見えやすくなります。
4. シュナちゃんのコーナー🐾
- Q. 最初の1品は、何から作ればいいのワン?
A. 内蓋を浮かせて使う料理には、野菜炒めや目玉焼き、フレンチトーストがあるんだワン。食材を切ってのせるだけのものから始めると、蓋の使い分けに慣れやすいと思うワン! - Q. 焼き目をしっかり付けたいときはどうするのワン?
A. 内蓋を食材に落として、発熱材にぴったり触れさせるんだワン。焼き目が付くのは触れた面だから、僕なら厚みをそろえて切っておきたいワン。
5. 今後どう向き合うか:家庭での取り入れ方
取り入れるなら、いきなり献立の中心に据えるより、「火を使いたくない」という日の選択肢にするのが現実的だと私は考えています。メインを1品これに任せ、汁物や副菜を並行して作れば、台所での待ち時間がそのまま作業時間に変わるからです。
向いているのは、少人数分の焼き物を手早く用意したい人や、フライパンやボウルを出す回数を減らしたい人です。反対に、大人数分を一度に作りたい人や、揚げ物をよく作る人には、フライパンや鍋の代わりにはなりません。買う前に、自宅のレンジに入るかどうかと、よく作る料理が「焼く・蒸し焼き・煮る」の範囲に収まるかを確かめておくと失敗が少なくなります。
使い始めは、ポークソテーの「内蓋を落として600Wで7分」のような公式レシピの手順をそのままなぞるのが近道です。公式にも、条件が違うと同じ仕上がりにならない場合があると注意書きがあるので、慣れてから食材の厚みや量に合わせて調整していけば十分です。
個人的には、発熱材を使うレンジ調理器具はこれから増えていくのではないかとみています。下ごしらえ済みの食材と組み合わせれば、包丁とまな板を出す手間まで減らせます。平日の夕飯づくりの負担をどこまで軽くできるかが、この道具の評価を決めるはずです。
編集後記
10点満点なら、8点以上をつけたい道具です。焼き目の付き方は気になるものの、火を使わずに焼けるのはいいと思います。片付けも楽にはなりそうなので、一人暮らしで料理が苦手な人にこそすすめたいです。続報では、いろいろなジャンルのレシピに加えて、どんな料理には向かないのかも知りたいところです。


